買い物依存症と言ってもその病態は様々です。軽症であればまだ借金はしません。しかし家のお金を勝手に持っていく、友人や親からお金を借りるなどしてギャンブルを続けようとします。この状態が悪化すれば、カードローンから始めて消費者金融、さらには闇金にまで手を出し、借金を返済するためにまた借金をするようになります。中には自己破産する方、窃盗した盗品を換金する方、会社のお金を横領する方もいます。これで済めばまだ良いかもしれません。重症化した買い物依存症の末路として、経済的なひっ迫が続き精神的に追い詰められ、最終的に自殺という手段を選ぶ方もいます。
問題が悪化する前に、対策を立てる必要があります。買い物依存症は意思の問題ではありません。原因の一つは、過去の成功体験です。買い物をすることで得られた快感を脳が覚えてしまったのです。この病気を克服するためには、買い物から離れた生活を習慣化させる必要があります。
当院は入院設備を持たないため、外来通院での治療となります。買い物依存症の治療で一般的なものは集団精神療法ですが、そのときの精神状態によっては薬物療法も行います。
1、集団精神療法
毎週 火曜日 19:00~20:30
同じように過度な買い物による問題を抱えている他の患者さまと一緒にこれまでの生活を振り返り、これからの健全な生活の送り方について考えます。他者の話を聞くことで一人じゃないという安心感や自分も回復できるんだという自信を得ることができます。引き金や対処行動を具体的に検討することで、衝動買いの欲求をコントロールするスキルを身につけます。なお、こういった集まりは医療機関に限らず、DAという自助グループでも行われています。一部地域で開催されておりますので検索してみると良いでしょう。
2、薬物療法
買い物依存症の方は頭の中がお金の返済のことでいっぱいです。焦りや不安、落ち込みが生じやすく、思考が狭くなると「もう死ぬしかない」と考え、実際に自殺という手段を取ってしまう方もしばしばいます。そのため、診察時には医師が精神状態をチェックし、投薬が必要な病状であれば患者さまの希望を伺った上で抗不安薬や睡眠導入剤などの処方を出すことがあります。また、他の精神疾患が合併している場合にはその症状に対しても投薬を行います。場合によってはそれだけで買い物衝動が落ち着いてくることもあります。
治療期間について
治療期間については、上記治療を受けながら概ね2年ほど通院を続けます。しかし通院するうちに精神状態が悪化してしまった場合には、入院設備のある病院と連携し入院治療を行います。
なお、一人でいると過度な買い物に走りやすい、本人の買い物の問題に家族が対応しきれないなど、単身生活に問題がある方の場合はグループホームへの入所も検討します。生活指導員のもと、過度な買い物に繋がる引き金を避けた安全な環境で規則正しい生活習慣を築くことができます。当院のグループホームについて詳しくはこちら