薬物依存症とは
薬物の種類
違法から合法のものまで依存性のある薬物はたくさん存在します。ここでは当院の患者さまの中でよく使用されている薬とその効果を紹介します。
1、覚醒剤(アンフェタミン、メタンフェタミン)
日本で最も乱用されている違法薬物。興奮作用が強く、性的な快感を強める、集中する、やせるなど様々な目的で使用される。使用すると感覚が過敏になり何日間も眠らずにいられるが、薬効が切れたときの脱力感や不快感はとても大きい。幻聴、幻視、被害妄想といった離脱症状が出やすい。
2、大麻(マリファナ)
大麻草という植物から作られる薬物。10代20代の若い世代で比較的使われる。俗にいう第六感が働くらしく、特に音楽や美術などの芸術に関わる活動において使用する人も多い。多幸感、食べ物が美味しく感じる、リラックスできるといった効果もあり、気軽に使われている。実際には覚醒剤と同様に依存性は強く、離脱症状も生じる。
3、処方薬(睡眠薬、抗不安薬、鎮痛薬)
違法な薬物ではないが、その効果を得るために規定量よりも多く服用することを過剰服薬という。最初は不安や焦燥感を消すために適切な量を服薬していても、繰り返し服薬するうちに同じ量では同等の効果が得られなくなり(耐性という)、徐々に頻度や量が増えていく。中には現実逃避や自殺することを目的として過剰服薬をすることもある。より効果を高めるためにお酒とあわせて飲むこともあり、アルコール依存症との合併も多い。
4、市販薬(風邪薬、咳止め、鎮痛剤)
処方薬と同様違法な薬物ではないが、市販薬の中には覚醒剤や大麻と似た効果を得られるものがある。違法薬物に比べれば安価で手に入りやすいため、若い世代で使用していることが多い。その分習慣化しやすく、薬がないと無気力、抑うつな気分に陥るため常に買い求めている。中には出費が重なり経済的負担が大きくなることを危惧し万引きという手段で手に入れる人もいる。
5、コカイン
強力な中毒性を持つ麻薬。日本ではあまり多くないが、その興奮作用は強烈であるためハマる人もいる。覚醒剤と同様に疲労感や眠気を感じずに高揚感、活動力を維持できる。依存性はとても強く、身体への負担も大きい。
薬物依存症の診断
薬物依存症の定義については、ICD-10(WHO作成の様々な病気に関する国際的な診断基準)が以下のように定めています。ここでいう薬物とは、覚醒剤や大麻、シンナー、コカイン、合成麻薬などの違法薬物だけでなく、処方薬や風邪薬などの市販薬も含みます。(※当院の判断で一部平易な表現に言い換えています)
- 薬物を摂取したいという強い欲望あるいは強迫感がある
- 当初考えていた使用量より多く使ってしまう、予定より長い時間使い続けてしまうなど、使いたい気持ちを抑えることができず、行動をコントロールできない
- 薬物使用を中止もしくは減量したときに離脱症状が生じ、その離脱症状を避けるために再度薬物を使用する
- 薬物を始めた頃の量では使用効果が満足に得られず、だんだんと量や使用頻度を増やす
- 薬物使用のために、他の楽しみや興味を次第に無視するようになる。薬物を使用するために費やす時間が増えたり、使用後に元の健康状態に回復するまでに時間がかかる
- 薬物使用によって明らかに有害な結果(経済的、社会的、対人関係的、法律的な問題)が起きているにも関わらず,依然として薬物を使用する。
上記症状のうち3つ以上が過去1年のうちのある期間にともに存在している場合、診断されます。
ただし、この診断基準を十分に活用するには専門医のように知識と経験が必要であるため、自己判断で用いないよう気をつけてください。自分の病状がどの程度のものなのか気になるという方はこちらのチェックリストをどうぞ。
当院は通院専門のクリニックですので家事、仕事を続けながら薬物依存症の治療に取り組めます。また重症の場合は日中夜間を通した治療が必要になりますので、その際はクリニックの近くの当院のグループホーム(回復施設)をご案内しています。ぜひ、仲間と一緒に薬物依存症の治療をしていきませんか。患者様のご都合に合わせて治療方法を選択できるように、薬物依存症の治療コースをご用意しております。主治医と相談してご自身に合った方法で治療を開始していただけます。外来通院での治療ですが入院が必要な場合には専門病院と充分な連携があります。また悩みを抱えるご家族への家族相談には特に力を入れています。