依存症の症状
依存症の症状について、「特色」「経過」「症状」「離脱症状(禁断症状)」の4つを紹介します。
1、特色について
依存症には以下に挙げる4つの特色があります。
強迫的
やらずにはいられない
反復的
やめられず、繰り返す
衝動的
思いついたら、すぐ行動してしまう
貪欲的
こだわり、追求し、執拗に追い求める
2、経過について
治療に入る前の段階では、自分は病気ではない、自分にはまったく問題などないと言う人もいますが、人はみな自身が変化する潜在力を持っており、治療過程でその人の動機に働きかけることによって考え方が変化することが、研究によって示されています。
その変化を、次の5つのステージ(段階・時期)に分けて理論モデル化した研究者によって、それは「変化のステージモデル」と言われています。依存症の人も自身の行動を振り返ったり、周囲の人の提言に耳を傾けたり、治療を受けたりなどすることによってステージを変えていきます。症状がステージとして進行します。そのことを理解できなかったために、過去には否認という言葉がよく使用されてきました。
変化のステージモデル(5つのステージ)
無関心期
変化の最初の段階で、本人は問題行動に気づいていないので、行動を変えることを嫌がったり、現状を維持しようとします。問題行動の良くない点が良い点よりも重大だとは思っていません。
- 家庭生活や仕事に影響があるとは思っていないので、過度の飲酒を続ける
- 飲酒やギャンブルが問題だとは考えていない
- 治療等はまったく必要と思っていない
関心期
自分が問題を抱えているという事実がわかり、その解決について真剣に考え始めます。
何とかして自分の問題を理解し、その原因を見極め、可能な解決方法を考え出そうとします。- 治療のための情報をたくさん集めるが、参加申し込みに踏み切れない
- どうすればよいかをおそらく知っているが、行動に移す準備が足りない
- 家族が飲酒やギャンブルの話をすると怒る
準備期
近い将来に変化する準備をします。今にも行動に移そうとしています。
- このままではいけないと思い、家族や友人に相談する
- 治療先を探し始める
実行期
外面的に最も目立った変化を見せる時期です。準備してきた計画を実行に移します。
- 治療を受ける
- 自宅に置いてあるお酒を一滴残らず捨てる
- 断酒や節酒に取り組む。ギャンブルを止めることに取り組む。
維持期
変化の最終ステージです。行動変化を維持することは難しいですが、実行期に得たものを温存しようと努力し、再発を何とか防ごうとします。
- 治療を継続し、安全な生活を維持する
- 自助グループに参加し続ける
3、症状について
依存症の症状は、身体に現れるもの以外に、人間関係、家族関係、社会的問題となってさまざまなところに現れてきます。長期にわたる物質乱用は、個人の生活場面を破壊していきます。
① 身体上の問題
身体的な耐性が形成されるため、アルコールや薬物を体や脳が欲求します。離脱症状が現れるようになると、その苦しさを緩和するためにますます物質を必要とします。肝硬変などの肝臓疾患、高血圧、癌の発症など、身体の損傷のほか、思考障害や記憶障害、認知機能低下など脳へのダメージもあります。また、性機能が障害されていきます。
② 人間関係の問題
イライラしすぎる、すぐにカッとなって腹を立てる、暴言や暴力が出るなど、自分の感情の制御・コントロールがうまくできなくなるので、人間関係に支障が出るようになり、親しい関係を壊していくことが少なくありません。
③ 家族関係の問題
夫婦間での暴言・暴力、乱れた生活行動によって、いっしょに生活する家族が疲弊します。夫婦関係、親子関係に悪影響を及ぼします。離婚や子どもの養育放棄や虐待の原因になることも少なくありません。
④ 社会的問題
物質の過量摂取は、失職、離婚、子供の教育への悪影響など、日常生活上での問題を生じ、住居・雇用・金銭をめぐる社会的トラブルも生じやすくなります。
4、依存症の離脱症状(禁断症状)について
身体的な耐性が形成されるため、アルコールや薬物を体や脳が欲求します。長年使用していた物質の使用をやめると、次のような離脱症状(禁断症状)が起きることがあります。発汗、イライラ、不安、不眠、手指の振え、てんかん発作、うつ状態、幻覚、幻聴、幻視などがあります。