収監者との文通 Uさんとの往復書簡H27/9/16

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U様
前略
 お手紙、ありがとうございます。9/6・9/11付のお手紙、16日に届きました。9月に入ってそちらも大分涼しくなってきたそうですが、今年は秋の訪れが少し早目なのでしょうか、横浜もこのところ涼しい日が多くなっています。

 Sさんとの件、きっぱり諦めるとの結論を出されたそうで、冷静で賢明な結論だと思います。そして先ずは、クレプトマニアという病気を治療する事とお父様を守り支えて行きたいとの思いに頭を切り替える事が、彼女への想いを克服し忘れる意味でも力になる事でしょう。

 お手紙の中で、「達也先生は、どうして私の事を真剣に思ってくれるのですか?」と書かれています。
≪お答え≫;クレプトマニア(盗癖)というのはWHO(世界保健機構)が正式に認定していうる病気です。脳神経と伝達物質(神経に命令を伝える物質)に障害が生じている病気です。そんな病気なので、自分ではもう2度と窃盗はしないと心に誓っていても、病気が強迫的(逆らえない力)で「盗め!」という命令を発してしまうわけです。では、どうすれば良いのでしょうか?そうです-治療が必要ですよね。治療によって完治させる事は出来ませんが、病気を抑えて再犯を防止し続ける事はできます。しかし、世の中では、「窃盗=犯罪=刑罰」という認識が昔から続いてきています。盗癖が病気だと分からないままに治療法も考えられないままに、窃盗を止めさせる為には刑罰しか方法が無いと考えられて来たからです。それは精神医学が未発達の状態だったからだと思います。そんな事情でクレプトマニアという犯罪の原因である病気が治療されないままに放置されて来たからこそ、再犯を防止出来なかった分けですね。
 でも時代が進み、これが病気であり治療も可能だという事が分かって来ました。しかし、実際に治療により再犯を防止して幸福な人生を取り戻す人がいなければ治療が可能である事が世の中に拡がりません。ですから、Uさんには是非とも治療で新しい幸せな人生を取り戻す事で世の中にこの病気の真実を知らせる力になって欲しいと思うわけです。それがまた迷惑をかけた世の中への最大の償いになるのではないでしょうか?そんなUさんへの期待が、Uさんへの真剣な想いに繋がっているのだと思います。

又、お手紙では「クレプトマニアの治療をして治るのだろうか?本当のところ物凄く不安です」と書かれていますが、上記の様に病気そのものは完治しませんが、治療によって病気の症状である窃盗行為を止め続ける事は可能です。ですから、生涯止めつづければ結果的には完治したのと同じ一生を送る事ができます。そして、それに確信を持つには

草々 平成27年9月17日 大石クリニック鈴木達也

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