収監者との文通 Aさんとの往復書簡 H26/11/30

標準

<A⇒鈴木>
前略
鈴木さん、お手紙届きました。いつもありがとうございます。

最近TVのNHKで依存症の番組をやっていたのでちょっと見てみました。ギャンブル依存症は推定で536万人にも達するそうで、成人男性の12人に1人の割合になるそうです。成人男性でなく、成人全般だったかな?ちょっと自信が・・・・(笑)
でも536万人は凄い人数だと思うんですよね。殆どがパチンコ、スロット依存で私みたいなバカラ依存は少数みたいです。この番組で言っていたのですが、ギャンブル依存症者の脳には一生治らない障害が残るそうです。具体的な事は言ってなかったのですが、脳がギャンブル以外の事には反応しなくなるそうです。これは他の依存症にも共通して起こる事ですよね。
それと、ギャンブル依存症の治療には家族の変化が重要とも言っていました。家族の自助グループもあるらしく、そこに参加して家族の意識を変えないと依存症者の治療に繋がらないそうです。ギャンブル依存の場合、金銭面で家族に迷惑をかけるので、あえて家族が見放すというのも効果が高いそうです。
私の場合、家が貧乏だった所為もあり、家族に大きな被害、負担は掛けなかったですが、その代わりサラ金や闇金でお金を借りるようになってしまいました。その後は窃盗という犯罪に走ってしまうという悪の方へ進んでしまいました。それからは窃盗を何度も繰り返し、刑務所に6回も入ってしまいました。今はこの刑務所生活を最後にしようと頑張っている次第です。
少しTVの話からずれたのでTVにもどしますが、新宿でリカバリーパレードというのが行われたらしく、その模様も放送されていました。色々な依存症から回復した人がたくさんいて、あの中に自分も入れればどんなに良いかと思って見ていました。
周りに同じような思いで苦しんでいる人達がいるだけで、自分は一人ではないと思え、頑張れるんだなと、TVに映っていた人達の顔がそう物語っていました。私は未だ自助グループに参加した事が無いのでまだ実感が持てないですが、TVを見ていて同じ悩みを持った仲間との交流が依存症の回復には絶対に必要なんだなと思いました。絶対に私も自助グループに参加しよう!と改めて思いました。

鈴木さんからの手紙の中に、「手紙の内容を話して伝えられたらどんなに楽か」と書かれていましたが、正に私もずっと思っていた事でした。文章にすると、なかなか自分の想いの全てを伝えるのが難しく、伝えたい事の6~7割くらいしか書けていないのでは?と思っていました。人間の脳は「書く」より「話す」方が得意というのは何かの本で読んだ事があります。その本では、書く事は慣れるしかないと書いていました。書いて、書いて、書きまくる内に上手く伝えたい事が書けるようになるそうです。今はブログなどネット上で書く機会も増えているので書く練習には困らないかも知れませんね(笑) 私はこの手紙が書く練習に繋がっていると思います。

それと、もう一つ「根拠のない自信」ですが、これもよく分かります。前の手紙にもありましたが、「自分が決意した行動をする内に、その想いに相応しい人物になって行く」にもつながる言葉だと思います。
私の場合、「簿記1級に必ず合格する」に始まり、「公認会計士に合格する」、「刑務所に絶対戻らない」のこの3つを柱に、根拠のない自信を持ちたいと思います。先ずは「自分は絶対に刑務所に戻らない」と決意し、それに相応しい行動を日々続けて行き、自信をつけて行こうと思います。「悪木盗泉」、「斎戒沐浴」、「李下に冠を正さず」、「天網恢恢疎にして漏らさず」、この言葉を忘れず、日々過ごして行きます。

今、相撲の時期で、相撲を見ているのですが、その際の番組の終わりに今日の取り組み結果が出るのですが、勝った力士の所がオレンジ色で表示されます。それがバカラの罫線(出目表)に見えてしまうのは私だけでしょうか?東の力士がずっと勝ち続けていると「ツラ」だとか、東西が交互だと「テンコ」だと、こんな事でもバカラに結びついてしまいます。そしてバカラを想い浮かべると、やはりバカラをやりたいと思ってしまいます。こんな所にも危険信号があったんですね。新たなトリガーを見つけました。相撲だけでなく、似たような表?にも気をつけて行きます。
長々と書きましたが、今回はこの辺で失礼します。根拠のない自信、毎日思いを持ち続けて行きます。これからもどんどん寒くなります。お体を御自愛下さい。では失礼します。

早々
平成26年11月24日 A

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<鈴木⇒A>

A 様
前略
Aさん、こんにちは。街にはもうXmasソングが流れ、早や年の瀬を思わせる中、お手紙29日に届き嬉しく読ませて頂きました。

NHKの依存症番組を見ての文面に触れ、本当にポイントをよく掴んでいると驚くと同時に嬉しく思いました。ギャンブル依存症になると「脳がギャンブル以外の事には反応しなくなるそうです」という認識も全くその通りで、仕事とか家族、家計、健康・・・といった生きて行くうえで一番大事な事をそっちのけにしてもギャンブルにのめり込んでしまいます。ですから、治療による回復過程では逆にギャンブルへの関心が薄くなり、失ったり、失いかけたりしていた上記の仕事、家族、・・・といった本来の大事な物、人、事などへの想いを取り戻して行きます。その意味で言えば、Aさんは今、色々な困難はあってもギャンブル・バカラへの決別を決意し、将来の生活設計の一環として公認会計士への道を目指しつつ、又、刑務所内でのスポーツ、その他のイベントにも積極的に参加されており、確かにバカラ依存症からの脱却の道を歩み始めていると言えるでしょう。

TVで放映されたリカバリーパレードの模様を見て、そこに仲間との連帯による依存症回復への確かな力を感じ、自分もそういう回復の場に参加したいとの思いを抱かれたのも大きな前進だと思います。相撲の電光掲示板にバカラのルールをイメージする不安も仲間との連帯の中で克服する事ができます。たとえバカラ欲求を感じても仲間の顔を思い出すと「まさか、バカラなんかに行けるわけないよ」という思いになれるし、実際に行かずに済むんですよね。そういう経験を積み重ねる中で自信もつき、安心感も強くなって行きます。A
さんにもぜひそういう経験を積んで欲しいです。
ギャンブル・バカラ依存症の克服による再犯防止の為の行動を日々続ける事を、公認会計士試験の一つの受験科目ぐらいに位置づけて前に進んで欲しいと思います。そうです「根拠のない自信」を持ってです。

今回のお手紙でのギャンブル依存症に関する文面は、お世辞抜きで、「これは大石のホームページそのものではないか!!」とさえ思ったくらいです。「知は力なり」と言います。せっかく得る事が出来た知識を力としないまま眠らせてしまっては勿体なさ過ぎます。お手紙にも書かれているように出所後はまず自助グループ・GAに参加して仲間と共に依存症克服への道を歩み始めて欲しいと思います。

今回はAさんのお手紙と一緒にもう1通、性依存症による性犯罪収監者の方からのお手紙が届きました。その方(Sさん)は事件を起こす1年位前まで性依存症の自助グループ・SAに参加されていたそうです。でも仲間とは同じ性依存でも少し種類の違う依存だった事からグループから離れて1年後に再犯に走ってしまったようです。でも今度の再犯事件でやはり自助グループの必要性を痛感し拘置所から手紙で古巣のSAグループに連絡をとったそうです。そしたら昔の仲間がSさんと同種の依存癖をもつ新しい仲間を連れて面会に来てくれたそうです。20分という短い面会時間ながら話が弾み、Sさんはその場で出所後のSA復帰を約束したそうです。グループから離れていた仲間に手紙一本で直ぐに面会に来てくれる仲間というのは本当に家族みたいな絆で結ばれているんですね。やはり同じ病気で同じような苦しみ、悩みを味わった者同士の心の繋がりがあるからだと思います。Aさんも、GAでそんな仲間と一緒にバカラや犯罪と縁を切った人生行路を歩んでみませんか?大相撲の電光掲示板に負けてバカラに走りそうになっても仲間がその足を止めてくれますよ。

それでは今日はこれにてお開きとさせて頂きます。この先寒い季節が続きますので、くれぐれもお体に気をつけてお過ごし下さい。
草々
平成26年11月30日
大石クリニック相談員 鈴木達也

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